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「あ、そ、そうだ。従兄の家でショコラに会ったから写真を撮ってきたんだけど……。見る?」
「え、見たい!」
戸惑う気持ちを隠すために、思い付きで写真のことを口にしたら、佐尾くんが飛び跳ねる勢いで私の手をギュッとつかんだ。
嬉しそうに笑った佐尾くんとの距離がそれまでよりも狭まって、思わずビクついてしまう。それは触れられるのを避けたかったからではなく、単純に驚きと戸惑いの感情によるものだったのだけど……。
佐尾くんは、しまったという表情を浮かべて、慌てて私の手を振り解いた。
「ごめん、つい……。写真、見せてもらってもいい?」
一歩後ずさって私から身を引いた佐尾くんが、首の後ろを撫でながら遠慮がちに尋ねてくる。
「うん、待ってね」
カバンからスマホを取り出してショコラの写真を見せると、佐尾くんが私との距離を気にしながら手元を覗き込んできた。
「わ、もうこんな大きくなったんだ」
佐尾くんの明るい茶色の髪が、眼前で揺れる。それをぼんやりと眺めていると、彼が急にパッと顔をあげた。
「ありがとう、西條さん」
油断して気を抜いていたタイミングで笑いかけられて、何か思うよりも先に、カーッと顔が熱くなる。
「よかったら、また写真見せて」
佐尾くんの言葉に、コクコクと機械的に頷くと、彼がにこっと嬉しそうに笑う。その笑顔が、私をなんとも落ち着かない気持ちにさせた。
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