5.優しい雨予報

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佐尾くんを挟んで楽しそうに盛り上がっている清水さんと笹井さんは、3人だけで作業を進めていき、園部くんと私には目もくれない。 まるで3人のメンバーで構成されている班なのかと思うくらい、私たちふたりは清水さんが達から無視されていた。 清水さん達から指示されたことを目立たないようにこなそうと思っていたけれど、ハナから無視されている以上、自分の仕事は自分で見つけるしかない。 そう思ったから、調理器具の棚から持ち手がひとつついた鍋を持ってくると、そこに水を入れてお吸い物用の出汁をとることにした。 昆布を入れて火にかけ、ついでに持ってきたボウルを使って酢の物用の乾燥ワカメを水で戻す。 そこまで終えて顔を上げたら、すっかり手持ち無沙汰になっていた園部くんが救いを求めるような目で私のことを見てきた。 「俺は何したらいいと思う?」 「酢の物用のきゅうりと生姜でも切るのはどうかな」 ちらっと見ると、清水さんは佐尾くんや笹井さんと一緒に楽しそうに肉じゃが用の野菜の皮剥きをしている。ただの皮むき作業に3人がかりなんて、正直言って効率が悪すぎる。 実習時間内に全部の料理ができあがるように、清水さんと笹井さんがやっていることには口は出さずに他の料理の下準備を進めたほうがいいような気がした。
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