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「ちょっとでも可能性があるなら、あたってみてよ」
以前に従兄弟から、怪我をしていた身元不明の犬を病院で一時保護した話を聞いたことあるような気がするけど……。この子猫が受け入れてもらえるという確証はない。
だけど、佐尾くんが期待を込めた目で見つめてくるから、頷かないわけにいかなくなった。
「すぐ出てくれるかどうかわからないよ」
一応断りを入れてから、従兄弟の携帯に電話をかける。すぐ出なかったので勤務先の病院に直接電話してみたら、受付の人が従兄弟に取り次いでくれた。
私から事情を聞いた従兄弟はすぐに動物病院の院長に掛け合ってくれて。その結果、飼い主が決まるまでの間、病院で子猫を預かってもらえることになった。
「ありがとう、西條さん。よかったな、お前」
嬉しそうに笑いながら、佐尾くんが子猫を抱き上げる。子猫を見つめる佐尾くんの瞳は慈愛に満ちていて、とても優しかった。
元々、同学年の男の子の中でも整った顔をしている佐尾くん。そんな彼の横顔が、いつもに増して輝きを放って眩しく見える。
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