6.雨の日は、

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佐尾くんの手のひらの下で傘を握る手にぎゅっと力を込めたとき、彼の唇が遠慮がちに唇の端に落ちてきた。 その瞬間身体中の力が抜けて、傘を握る手の力も緩む。 ふたりの頭上でグラリと揺れた折りたたみ傘を、佐尾くんが私の手の上から支え直してくれる。 そうしてさりげなく傘の傾きを変えたかと思うと、軽く口の端に触れていただけだった佐尾くんの唇が、私のそれを覆うように重なった。 そっと優しく触れてくる佐尾くんのキスに、だんだん雨の音も聞こえなくなる。 聞こえてくるのはドキドキと鳴る心臓の音と、佐尾くんの少し浅い息遣い。 折りたたみ傘の下。雨の音も、肌に絡みつくような湿度も、全て意識の底に遠のいていく。 だから。雨の日は、……。
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