192人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
待ち合わせをした公園のベンチ。約束の時間の5分前に、彼女は既にそこに座っていた。
膝丈のワンピースの裾から覗く足をぴったりと揃えて、膝の上には手を添えて。俯き加減に座っているのが彼女らしい。
その様子を公園の入り口で立ち止まってしばらく見つめたあと、自然と緩みそうになる頬を引き締めた。
ゆっくり歩み寄って行くけど、緊張気味な彼女はすぐには俺に気付かない。
「西條さん」
笑いかけながら名前を呼んだら、彼女がハッとしたように細い肩を震わせた。
真っ直ぐなサラサラの黒い髪が風に揺れて、頭をあげた彼女が伏し目がちに俺を見る。
困ったような、恥ずかしそうな。彼女が顔をあげるその瞬間に、いつもドクンと胸が高鳴る。
西條さんのどんな表情も好きだけど、俯いた顔を不意にあげるその瞬間が、特別に綺麗だといつも思う。
最初のコメントを投稿しよう!