Extra.今日が雨なら

6/17
前へ
/201ページ
次へ
そばにいた西條さんが、俺を気にしながらほんの少しそばを離れる。 不自然な距離をとる彼女を気にかけながら、なんとなく嫌な予感がした。 そういえば、ふたりのうち、中3のときに同じクラスだったほう。こいつの名前は富谷(とみや)って言って。俺らのクラスの前を西條さんとその友達が通るたびに、「あの黒髪の子、結構可愛い」って騒いでた。 そもそも、俺が高校2年になって、西條さんの名前と彼女が同じ中学だってことを認識できていたきっかけは富谷だったりする。 正直言って、西條さんは中学時代からそんなに目立つ子じゃなかった。 だけど、中3のときは友達の付き添いみたいな感じで俺たちの教室に来ていることがよくあった。 富谷があんまり「可愛い」って騒ぐから、西條さんが教室で友達を待っているときに、俺もさりげなく彼女を見てみたりしていた。 その当時は西條さんに特別な感情を抱いたりはしなかったけど、長く伸ばした綺麗な黒髪からときおり覗き見える横顔が、確かに可愛いなとは思っていた。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加