193人が本棚に入れています
本棚に追加
動物病院につくとすぐ、従兄弟が子猫を診てくれた。
雨に濡れて少し弱ってはいたものの、子猫の体に異常はみつからず、佐尾くんはほっとしていた。
2週間以内に飼い主が見つかるように知り合いをあたってみる、と従兄弟に約束をして、子猫を動物病院に預ける。
名残惜しそうにしながら病院の外に出たとき、佐尾くんが「あっ!」とつぶやいた。
「俺、あいつを拾った段ボールの横に、傘置いてきちゃった。早く病院行くことしか考えてなくて、すっかり忘れてた」
朝から降っていた雨は止む気配もなく、未だ降り続いている。
少し考えてから、私は動物病院の軒先で困惑顔になっている佐尾くんに傘を差し出した。
「よかったら、どうぞ。傘置いてきたところまで」
「いいの?」
「途中まで同じ方向だから」
「ありがとう、すげー助かる」
困惑の表情を浮かべていた佐尾くんが、私の提案で一瞬にして笑顔になる。
最初のコメントを投稿しよう!