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「西條さーん、終わったー?」
放課後。クラスメートたちが帰ったあとに教室で学級日誌を書いていると、不意に間延びした、退屈そうな声が聞こえてきた。教室にはもう誰もいないと思っていたから、驚きすぎて心臓が止まりそうになる。
目を見開いて顔を上げると、佐尾くんが私の3つ前の席の椅子に跨いで座っていた。
背もたれに預けた肘の上に顎をのせた佐尾くんが、上目遣いにじーっと私の顔を観察してくる。
「な、何か用?」
警戒心を露わにしながら身を引くと、佐尾くんがにっこりと笑いかけてきた。
「うん。西條さんが日誌を書き終えるのを待ってた」
佐尾くんがそう言いながら、意味ありげに窓のほうに視線を向ける。その視線の先では、教室の窓ガラスにぶつかった雨の雫が筋になって次々と流れ落ちていた。
嫌な予感がした。それは、雨の日に限ってよく当たる。
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