191人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日も途中まで入れていってくれない? 傘、忘れちゃったんだよね」
やっぱり。この前傘に入れてあげたときに、「今回限りだ」とあれほど念押ししたはずなのに。
悪びれのない目をして笑いかけてくる佐尾くんに、心底呆れてしまう。
「この前が最後って言ったはずだけど」
「そうだっけ?」
最初からとぼけるつもりだったのか、佐尾くんが白々しく首をかしげる。
「そう。次の雨までには傘を用意するように、って伝えたはずだけど」
「そういえば、そうだったかも」
「そうだったかもじゃないから。仮に佐尾くんの傘がなかったとしても、家の人の傘を借りるとかビニール傘を買うとか、いくらでも方法はあるでしょう? 第一、今日は朝から雨だったじゃない。朝はどうしたの?」
強い口調でそう言うと、佐尾くんが困ったように肩を竦めた。
最初のコメントを投稿しよう!