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私ってば、佐尾くんが今朝相合い傘をした相手が女の子じゃなかったことに、ほっとしてるの────? そんなまさか!あり得なさすぎる!!
ふと浮かんだ考えをかき消すように、頭を左右に激しく揺さぶる。
「西條さん、どうかした?」
不審な行動をとる私を、佐尾くんが不思議そうに見つめてくる。
「別に」
「そう? とにかくそういうわけで、今日も傘がないんだよね」
「それは残念だね」
佐尾くんに素っ気ない声を返すと、書き終わった学級日誌とスクールバッグを持って立ち上がる。
教卓に日誌を置いて教室を出ようとしたら、佐尾くんがガタガタと椅子の音を鳴らして、慌てて追いかけてきた。
「あ、ちょっと待って。置いてかないでよ」
「佐尾くんこそ、ついてこないでください」
「冷たいなー、西條さん。途中までは帰り道が一緒なんだから、傘に入れてってよ」
「私じゃなくて、今朝入れてもらったお友達に頼めばいいんじゃないの?」
「わかってないなー、西條さん。俺は、西條さんの傘に入れてもらいたいの」
佐尾くんが私の前に回り込んで道を塞ぐ。
ふてくされたように唇を尖らせてこちらを見下ろす彼は、私よりも断然背が高いのに、まるで子どもみたいだ。
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