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一瞬だけ驚いたように大きく目を見開いた佐尾くんが、苦笑いを浮かべながら宙に浮いた手を気まずそうにゆっくり下げる。
「ごめん。いきなり触ろうとするとかキモいよな」
「…………」
気を遣って謝罪してくれた佐尾くんに、私はフォローの言葉すら口にできなかった。
触れられそうになった額を、真っ直ぐ分厚めにおろした前髪の上から手のひらで押さえつけながら、唇を噛む。
そもそも佐尾くんにぶつかってしまったは私の不注意だし、彼はただ心配してくれただけだ。それに対して私が示した拒絶反応は、どう見ても過剰だったと思う。
そのことは充分にわかっているし、佐尾くんに嫌な思いをさせたという自覚だってある。
それでも……。絶対に、何があっても、誰かに触れられるわけにはいかなかった。特に、額にだけは────。
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