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「ほんとごめん。深い意味はなくて、つい咄嗟に手が出たっていうか」
首の後ろに手をあてながら、佐尾くんが私から微妙に視線を外す。
私が険しい顔付きで黙っているせいか、佐尾くんの目線は哀しそうに、少しずつ下へと下がっていった。
男女問わず友達が多い佐尾くんは、きっと他人から強く拒絶された経験なんてほとんどないのだろう。
いつも鬱陶しいくらいに私に構ってくる佐尾くんが黙って俯いているのを見て、ひどく申し訳ない気持ちになった。
「私のほうこそ、ごめんなさい。でも、大丈夫だから」
「そっか、大丈夫ならよかった」
手のひらで前髪を押さえたままゆるりと首を振ると、佐尾くんが顔をあげて、ほっとしたように頬を緩めた。
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