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「そんな離れてたら濡れるよ? もうちょっとこっち来たら?」
自分の傘なのに遠慮して端の方に入っていたら、佐尾くんに笑われた。
心持ち佐尾くんのほうにずれてみたけれど、それでも傘からはみ出した右腕とスクールバッグは雨に当たって濡れてしまう。
学校を出てからも、微妙な間隔を保ちながら佐尾くんの隣を歩いていると、不意に斜め上から視線を感じた。
ちらっと視線をあげると、無表情の佐尾くんと目が合う。彼に真っ直ぐにじっと見つめられて、思わず心臓がドクンと跳ねた。
どうして、そんなにこっち見て……。
つい動揺して右肩にかけていたスクールバッグを引き寄せしまい、びしょ濡れのカバンを抱きしめた制服の胸元がじんわりと湿る。
焦って失敗した。
そっと息を吐くと、左の肩と腕にトンと何かがぶつかった。
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