2.雨の月曜日

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「当然じゃん。一緒に傘に入ってんだし」 佐尾くんが、花柄の傘をくるりと回して少しだけ持ち上げた。 「西條さんだって、そうでしょ? 傘持ってない俺のことを怒るわりに、俺が濡れないようにいつもうまく庇ってくれてるよね」 軽く首を傾げた佐尾くんが、にこりと笑いかけてくる。 「私は別に……」 素っ気ない態度をとってみたものの、内心では佐尾くんの言葉や仕草にものすごくドキドキしていた。雨に濡れた身体が冷たいのに、頬だけがひどく熱い。 表情から動揺を悟られたくなくて、長い髪で横顔を隠すようにうつむく。 佐尾くんの言うとおり、彼を傘に入れてあげるときは私なりに地味な気遣いをしていた。 大嫌いな雨の日に、他人を傘に入れてあげるなんて面倒だけど、私のせいで風邪をひかせたりしたら申し訳ないから。 たとえば、風の吹いてくる向きに合わせて佐尾くんのほうに傘を傾けたりとか。背の高い彼が窮屈でないように、傘を持つ位置を高くしたりとか。 私がしていたのは、気付かれなくてもあたりまえくらいの地味な配慮。 だから、朝から雨が降っていても平気で傘を忘れてきてしまうような佐尾くんに、私の配慮がバレていたなんて思わなかった。
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