2.雨の月曜日

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◇ 学校から30分ほどの道のりを歩いてようやく佐尾くんの住むマンションに辿り着くと、彼が私を濡らさないように気を付けながら傘を閉じた。 「ありがとう、西條さん。今日も助かった」 エントランスの軒先で、佐尾くんが私に向かって満面の笑みを浮かべる。 だけど、佐尾くんの隣を緊張しながら歩いていた私は、いつも以上に疲労を感じていて。彼に愛想笑いを返す余裕がなかった。 家に帰ったら少し休まないと。 「佐尾くん、傘……」 一刻も早く帰宅したいけれど、私の傘はまだ佐尾くんが持ったままだ。 花柄の傘を指さすと、佐尾くんが「そうだった」と、小さくつぶやいた。 もし指摘しなかったら、佐尾くんは私の傘を持って帰っていたかもしれない。やっぱり、私の傘が気に入ってるのかな。 疲れた頭でぼんやりとそんなことを考えていると、佐尾くんが笑顔で傘を差し出してきた。 「ありがとう」 「どういたしまして」 軽く会釈して傘を受け取ろうとすると、佐尾くんが突然「あっ!」と大きな声をあげた。それと同時にこちらに差し出していた傘まで引いてしまうから、行き場を失った私の手が宙を彷徨う。
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