2.雨の月曜日

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「あの……」 「西條さん、濡れてる」 私が戸惑いの声を漏らしたのと、佐尾くんが低い声でつぶやいたのはほぼ同時だった。 「ちょっと待ってて。俺、家からタオル取ってくる」 佐尾くんがそう言って、エントランスのドアを開ける。 「大丈夫。家、ここからそんなに遠くないし」 「すぐ戻るから待ってて」 「あの、本当に大丈夫だから」 懸命に引き止めたけど、佐尾くんの耳には私の声など届かないようだった。すごい速さでドアから飛び込んで、エントランスの奥へと消えていく。 本当に大丈夫なのに……。このまま黙って帰ってしまおうか。 そう思ったけど、手元に傘がなかった。 佐尾くんが傘まで持って行ってしまったらしい。 未だにやむ気配のない雨と、エントランスの軒先の端から下へと滴り落ちる雨水を見つめて深いため息をつく。 早く帰りたい。 雨の空気、匂い、降りしきる音。それらが全部、私を憂鬱にさせる。
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