2.雨の月曜日

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「綺麗なストレートの黒髪だなぁって」 面と向かってそんなふうに髪のことを褒められたことなんてなかったから、反応に困る。 耳たぶと頬が自然に熱くなり、なぜか心音までもがドクドクと速くなった。 「そんなことない……。佐尾くんみたいな明るいのも、ちょっといいなぁと思う。佐尾くん、中学のときは髪黒かったから、雰囲気が全然変わるよね」 他人から褒められることに慣れていない私は、佐尾くんのお世辞を間に受けて必要以上に焦ってしまって。なんとか自分のことから話題を逸らそうと必死だった。 早口で話題を佐尾くんのことに変えると、彼を包む空気がふっと一瞬柔らかくなる。 ドキッとして視線をあげると、佐尾くんが驚いたように目を見開いていて。私と視線が交わった瞬間に、ものすごく嬉しそうに破顔した。 「西條さん、知ってたんだ? 中学のときの俺のこと」 佐尾くんが目をきらきらと輝かせながら、やけに嬉しそうな声で尋ねてくる。
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