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仕方なく振り返ると、髪色の派手なクラスメートの男子が、やんちゃそうな目でこちらを見下ろしていた。
「西條さん、途中までいれてって」
彼がにこにこと笑いながら、私の折りたたみ傘を指差す。
反応せずにいると、彼が催促するように、コテッと首を横に傾けた。黄色味の強い、かなり明るめの茶色の髪が、彼の仕草に合わせてふわりと揺れる。
何人かの生徒が、無言で向かい合っている私たちのそばを横目に見ながら通り過ぎていく。きっとみんな、彼が話なんかに親しげに話しかけていることが不思議なんだろう。
私の前に立つ彼は、髪の色と同じくらい、いろんな意味で目立つのだ。
「西條さん」
さらに催促するように名前を呼ばれて、ようやく私も口を開いた。
「佐尾くん、私じゃなくて、自分の友達に頼んだら?」
「西條さんだって友達じゃん」
彼────、佐尾くんが、心外だとでも言いたげに唇を尖らせる。
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