2.雨の月曜日

23/24
前へ
/201ページ
次へ
「う、ん。だって佐尾くん、有名だったから」 「有名? 何それ」 小さな声で反応すると、佐尾くんが機嫌良さそうにけらけらと笑った。 私自身は高校2年生で同じクラスになるまで佐尾くんとの接点はなかったけれど、中学のときから彼の存在は知っていた。 いい意味で、佐尾くんは学年の中でも目立つ存在だったし、女子からの人気も高かったから。たぶん、私たちの中学の同級生で彼の名前を知らない人はいないんじゃないかと思う。 ちなみに、私が中学時代の佐尾くんのことをそれなりに知っているのは、中学3年生のときに仲の良かった子が、彼を好きだったからだ。 その子は私と同じであまり目立つタイプではなかったから、中学を卒業するまで佐尾くんのことを遠くから見ているだけだったけど。 偶然、廊下で佐尾くんとすれ違えただけで喜んだり、週1の全校集会でちらっと彼の姿を見かけるだけで元気いっぱいになっている彼女の恋は、微笑ましくて可愛かった。 彼女は私たちとは別の高校に進学して、なんとなく疎遠になってしまったけれど。 私がこんなふうに佐尾くんと話すようになっていると知ったら、どう思うだろう。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

191人が本棚に入れています
本棚に追加