3.雨上がりの放課後

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お昼を過ぎた頃から徐々に曇り始めた空には、雨の気配が色濃くたちこめていた。 この様子だと、放課後は雨かもしれない。 そう思いながら、机の横に引っ掛けたスクールバッグに視線を落とす。 いつもなら、雨の気配を感じると憂鬱で憂鬱で仕方ない。その気持ちは年間通してずっと変わらないけれど、今日だけは雨が降ったほうが好都合だと思った。 「へー、そうなんだ。すごーい!」 窓の向こうの曇り空を眺めていると、昼休みでざわつく教室に、明るく甲高い笑い声が響いた。つい反応して振り向くと、クラスの中心グループにいる女子たちが、佐尾くんの属する男子グループのところに集まって騒いでいる。 女子グループのメンバーのなかで、一番目立つのは清水さんだ。性格も明るいし、容姿が華やかで、制服の着崩し方だって上手くて可愛い。 彼女は佐尾くんや私と同じ中学出身で、中学時代から佐尾くんとも仲が良さそうだった。 一般的な男女間の距離がどれくらいなのか私にはよくわからないけれど、清水さんの佐尾くんに対する距離は、平均よりも近い……と思う。 男子グループと集まっているときの清水さんは、だいたいいつも佐尾くんの隣をキープしているし、今だって、何か話しかけながら佐尾くんの肩に軽く触れている。
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