3.雨上がりの放課後

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実を言うと、私は洗濯済みの借り物のタオルをもう3日ほどスクールバッグに忍ばせて持ち歩いているのだ。 この3日間、こっそりと話しかけるタイミングを探していたけれど、いつも誰かに囲まれている佐尾くんに、私が声をかける隙なんてなかった。 佐尾くんはタオルのことについて何も言ってこないけれど、だからといって借りたままうやむやにするわけにもいかない。 それなのに、カバンの中で持ち歩くのが1日、1日と伸びていくごとに気まずさが募り、返すタイミングがますますわからなくなっていく。 だから、傍目にはくだらなく思えるようなことをひとりで拗らせている私がタオルを返すためには、を待つしかないのだ。 教室の中心で笑う佐尾くんや清水さんたちのグループから、そっと視線をそらす。 窓の外に浮かぶ灰色の雲を見つめて、私は小さく息を吐いた。
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