3.雨上がりの放課後

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昇降口の端っこでスクールバッグを下ろすと、適当なノートの端を破く。 《ありがとうございました。》 ノートの切れ端で作った長方形の小さなメモに、なるべく丁寧に心を込めた字を書いて、タオルとともに紙袋の中に入れる。 周囲に人がいないタイミングを慎重に見計らうと、紙袋を佐尾くんの靴箱へと手早く突っ込んだ。 きっと、私よりあとに学校を出る佐尾くんが気付いて持って帰ってくれるだろう。 これでようやく気がかりがなくなった。 「あれ、西條さん?」 けれど、ほっと息を吐いたのも束の間、背後から声をかけられた。 周囲はよく確認したはずなのに……。 ドキッとしながら振り向くと、そこには佐尾くんがいて。靴箱の前から不自然な動きで立ち去ろうとしている私を不思議そうな目でジッと見ている。
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