3.雨上がりの放課後

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「今、俺の靴箱に何か入れた?」 「あ、え、っと……」 別に悪いことをしたわけじゃない。 ただ、借り物のタオルを直接返せなくて靴箱に突っ込んだ。それだけのことなのだけど、佐尾くん本人にその現場を目撃されていたのだと思ったら妙に気まずい。 そのまま立ち去ることもできずに挙動不審な態度をとっていたら、佐尾くんが笑顔で靴箱のほうに近付いてくる。 「西條さん、俺の靴箱に何入れたの? ラブレターだったらどうしよう」 訳のわからない冗談を言いながら靴箱に手を突っ込んだ佐尾くんは、紙袋の中に入ったメモと洗濯済みのタオルを確認して、ほんの一瞬無表情になった。 あれ。私、何か間違ったことをした……? 垣間見えた佐尾くんの無の横顔が、私を不安にさせる。 佐尾くんの次の反応を待ってドキドキしていると、私のほうを振り向いた彼が、明るくにこっと笑った。
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