3.雨上がりの放課後

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「あー、これ。この前の。こんなところにこそこそ入れずに、普通に手渡してくれればいいのに」 「こそこそってわけでは……」 佐尾くんが笑いながら、靴箱から取り出した紙袋を自分のスクールバッグに突っ込む。 彼が明るい笑顔を見せてくれたことにほっとする反面、胸に微妙な気まずさも残る。 私だって、できれば直接返したかった。私なりに3日間は努力した。その結果、どうしても話しかけるタイミングが見つからなかった。 そんな私の地味な葛藤なんて佐尾くんには到底理解してもらえないと思うけど、堂々と返せなかった分、お礼はきちんと言葉で伝えるべきなのかもしれない。 「あの、ありがとう。返すのが遅くなってごめんなさい」 「全然。わざわざ洗濯してもらってありがとう」 佐尾くんに向かって小さく頭をさげると、今度こそ本当に肩の荷が降りた気がした。 これで安心して家に帰れる。 「じゃぁ」 「あ、待って。西條さん」 すっきりとした気持ちで佐尾くんのそばを立ち去ろうとすると、彼が私を呼び止めてきた。
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