3.雨上がりの放課後

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「佐尾ー、帰んの?」 佐尾くんの背中を付かず離れずの微妙な距離で追いかけていると、校門を抜けるまでにたくさんの同級生たちに話しかけられた。もちろん、私ではなくて佐尾くんが、だ。 「あ、佐尾くんだ。バイバーイ」 「バイバーイ」 四方八方から聞こえてくる声には、女の子のものもいくつか混じっている。 そのすべてに平等に反応して笑顔で手を振り返している佐尾くんを後ろ姿は、売れっ子の芸能人みたいだ。 佐尾くんがモテるのは知ってるけど、想像以上だ。 テレビの向こう側にいるアイドルでも眺めているような。どこか俯瞰的に彼の背中を見つめながら、私なんかが一緒に帰ってていいのかな……と心配になる。 いや。心配しなくても、誰も私と佐尾くんが一緒に帰ってるなんて思わないか。 せいぜい、地味な女が佐尾くんの近くを歩いてるなーと思われているくらいだろう。 我ながら、自虐的だな。 自嘲の笑みを浮かべながら歩いていると、校門を出たところで佐尾くんが私を振り返った。
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