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2歩と半分前に出てたところで、ようやく佐尾くんと横並びになる。それでも、佐尾くんと私の間には人がふたりが入れそうなくらいの微妙な距離があった。
私を見つめてじーっと考えたのちに、佐尾くんが肩をすくめながら苦笑いする。
「んー、せめてこれくらい? これでも遠いけど……」
ひとりごとみたいにそう言うと、佐尾くんが私と歩調を合わせて歩き始めた。
雨の日のように傘というバリアで周囲から顔を隠せないせいか、佐尾くんと一緒に歩いているだけで妙に緊張してしまう。佐尾くんがいる側がそわそわして、落ち着かなくて仕方がない。
人がふたり入れるくらいの距離を空けているとはいえ、横並びになって歩く私たちは、周囲からも一緒に帰っているように見えるだろう。そのことを意識すると、心音が速くなった。
「西條さんて、部活とかしてないの?」
ドキドキしながら歩いていると、佐尾くんが唐突に話しかけてきた。
「部活、は……そうだね。高校に入ってからはやってない」
「てことは、中学のときは何かしてた?」
「一応。地味なやつだけど」
「地味? 部活に地味とか派手とかある?」
足元に転がる小さな石ころを蹴飛ばしながら、佐尾くんがケラケラと笑う。
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