3.雨上がりの放課後

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「中学の同級生で、佐尾くんがバスケ部だったってことを知らない人はいないと思うよ」 「そんなことないよ」 「そんなことあるよ。佐尾くん、有名だったもん」 何気なくそう言うと、佐尾くんが恥ずかしそうに私から目を逸らして、手のひらで顔を扇ぐ。 「こないだから西條さんが言う、有名って何? ていうか、西條さんは何部だったの?」 「家庭科部」 人数が少なくて目立たない部活だったから、もしかしたら佐尾くんは存在を知らないかもしれない。 小さな声で答えたら、佐尾くんが隣でぱっと勢いよく顔を上げた。 「そういえばあった。家庭科部」 「だから言ったでしょ。地味だって」 私が入っていた部活は、大半の生徒たちから「そういえばあった」くらいにしか認識されていない小規模だったのだ。 佐尾くんから返ってきた反応が予想通りすぎて、つい苦笑いが漏れる。
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