3.雨上がりの放課後

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「いや、家庭科部があるのはふつーに知ってたよ。中学の調理室の場所って一階の角だったよね? 部活の帰りにそばを通ったらいい匂いがするときあって、何作ってんだろーっていつも思ってた」 「気を遣わなくていいよ。実際、部員は常に5人前後で、家庭科の先生と一緒にまったりやってた部活だから」 「でも、ちゃんとやってた部活じゃん。そのときに西條さんと知り合いだったら、絶対食いに行ったのに」 どこまで本気なのかはわからないけど、佐尾くんが悔しそうな顔をするから、なんだか可笑しかった。 「じゃぁ、西條さんは料理上手いんだ?」 下を向いてこっそり笑っていると、佐尾くんが興味深そうに問いかけてくる。 「作るのがちょっと好きなだけ。別に上手くはないよ。クッキーやケーキを焦がさず焼ける程度だし」 「へぇ。俺にしてみたら、クッキーやケーキを焼けるってことがまずすごいけど」 家庭科部でしていた活動なんて、全然大したことではなかったのに。佐尾くんがやたらと褒めてくれるから気恥ずかしい。
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