3.雨上がりの放課後

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「できれば続けたかったんだけどね、実は俺、中学のときの引退試合前に膝の故障してて。最後の試合に無理して出たら、ちょっと悪くなっちゃったんだ」 佐尾くんが左膝を指さしながら、他人事みたいに明るく笑う。 「そ、なんだ……」 中学時代の佐尾くんのことは友達伝いにいろいろと知っていたけれど、足のケガのことは一度も聞いたことがない。 中3のときの引退試合にだって、ケガのことを誰にも悟らせずに出場していたはずだ。 佐尾くん目当てで毎回バスケ部の試合を見に行っていた私の友達が「引退試合でも佐尾くんの活躍がすごかった!」と、話していたくらいだから。 だけど本当は、明るい笑顔の裏に誰にも言えない辛さを抱えていたのかもしれない。 誰にだって人に触れられたくない傷があることは、私が一番よくわかっていたはずなのに。余計なことを言ってしまった……。 自己嫌悪に陥ってうつむいていると、佐尾くんが横から私の顔を覗き込んできた。
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