3.雨上がりの放課後

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咄嗟に身を引こうとしたら、佐尾くんが私の目をジッと覗き込むように見てきたから、金縛りにでもあったような感覚に襲われて退けなくなった。 「俺がもうちょっと西條さんと歩きたい気分なの。今日は雨じゃないし、傘の心配もいらない。俺が西條さんのことを送ってくのに、何か不都合でもある?」 「……」 黙り込んでいたら、佐尾くんが私に返事を催促するように首を横に傾げる。 「不都合、ある?」 「な、い……と思います」 佐尾くんの聞き方は、まるで誘導尋問だ。 ボソリと小さな声で答えると、佐尾くんが嬉しそうに笑う。 「じゃぁ、行こ。そこ、曲がる?」 明るい声で笑いながら、佐尾くんが別れ道を指さす。方向を示す彼の人差し指が、つい一瞬前に私に触れたんだ。そう思うと、急に動悸がしてきた。 妙な胸騒ぎを沈めたくて、手のひらを前髪の上から何度も強く撫でつける。だけど動悸は治まるどころか、ドクドクと激しくなるばかりだった。
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