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目を見開いて、さらにはぽっかりと口まで開けている私をよそに、佐尾くんが優しい声で茶太郎に話しかけ続ける。
最初は難しい顔でじっと耐えるように硬直していた茶太郎だったけど、そのうち佐尾くんに気を許したのか、その目を気怠そうに少し細めた。
「すごいね、手なづけちゃった……」
呆然とした声でつぶやくと、佐尾くんが笑った。
「いや、しつこいから仕方なくって感じじゃない?」
「それでもすごい」
「西條さんも触ってみたら? おとなしいよ。飼い主がよく世話してるんだろうな。毛並み、柔らかくてふわふわ」
佐尾くんがちょっと強めにガシガシと撫でると、茶太郎は迷惑そうに彼を見てから目を閉じた。その様子を見ていたら、触っても案外大丈夫なのかもと思えてくる。
躊躇いながらも庭の柵に近寄る。
佐尾くんに撫でられている茶太郎は、さっきまでの警戒モードとは打って変わって、リラックスしていて心地良さそうだった。
コクっと唾を飲み込んで、佐尾くんが差し込んでいるすぐ横の柵の隙間から手を伸ばす。
だけど、私がふわふわとした茶色の毛先に触れようとしたとき、それまで気持ち良さそうにしていた茶太郎が反射的に目を開けた。
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