フツリアイな相合い傘

１．雨の中の子猫

結局、私が傘を挿したまま。私たちはふたりで小さな傘に入って、雨の中を歩き始めた。

女性用の折りたたみ傘は、高校生ふたりを雨から守るにはちょっと狭い。

ふたりともが濡れないようにするには自然と寄り合わなければならないけれど、隣を歩くのが佐尾くんだと思うと、緊張で肩が凝る。

歩調を合わそうと気を遣っていると、道路に跳ね返った雨水で足が濡れる。

佐尾くんの明るい茶色の髪は目立つから、そばを通り過ぎていく他の生徒たちの視線が痛い。

ただでさえ雨の日は気が重いのに、その状況はさらに私を憂鬱な気持ちにさせた。

顔をうつむけたまま、視線だけを上げて佐尾くんの横顔を盗み見る。

目線を高くあげた佐尾くんは、今にも鼻唄でも歌いだしそうなほど機嫌の良さそうな顔をしていて。スニーカーが雨に濡れることも気にせず、私の隣を軽やかに歩いていた。

こんな雨の日に、何がそんなに楽しいんだろう。

佐尾くんに気付かれないように、そっとため息をつく。