3.雨上がりの放課後

29/43
前へ
/201ページ
次へ
「何、笑ってんだよ」 私を横目に見ながら、佐尾くんがふて腐れた声でつぶやく。 男の子に対して「可愛い」なんて思ったら嫌がられるんだろうけど……。その反応が可愛くて、ますます笑い声が漏れてしまった。 「別に、からかってるわけじゃないよ。その話を聞いたとき、佐尾くんて優しいひとなんだなって思ったし」 「やめてよ。西條さんが聞いた話が、9割方ほんとだから、すげー恥ずかしい」 「そうかな」 「そーだよ!」 不機嫌そうに答える佐尾くんを見ながらクスクスと笑っていたら、彼が諦めたようにため息を吐いた。 「夜店の金魚ってさ、弱っててすぐ死んじゃうことが多いじゃん? でも、俺が4歳くらいのときに金魚すくいでとってきたそいつは、10年近く生きたんだよ。だから、俺にとってはただの金魚じゃなかったの!っていうのが、言い訳」
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加