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勝手に自己完結させてしまった佐尾くんの話に曖昧に頷くと、彼が私に向かって眩しいくらいの笑顔を見せた。
「また誘っていい? 西條さんのこと」
「え……」
驚いて目を見開く私に向かって、佐尾くんが何ごともなかったようにさっと手を振り上げる。
「じゃぁ、またね。西條さん」
笑顔で私に手を振ってから、佐尾くんが一緒に歩いてきた道をひとりで引き返して行く。少しずつ遠ざかっていく彼の背中が曲がり角に消えて見えなくなるまで、なぜか私は、その場に立ち尽くしたまま動けなかった。
佐尾くんの背中が曲がり角の向こうに気えた瞬間、彼の笑顔と言葉が鮮明に脳裏に蘇る。
雲間から現れた太陽みたいに、明るくて眩しい佐尾くんの笑顔。それが私の心の全部を支配して、なんとも落ち着かない気持ちになった。
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