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◇
家に帰って翌日の英語の授業の予習をしていたら、お母さんが部屋のドアをノックした。
「和紗。悪いんだけど、食パン買ってきてくれない? スーパーでもその辺のコンビニでも、どこだって構わないから。明日の朝の分、買い忘れちゃったのよ」
財布を持って部屋に入ってきたお母さんが、そこから千円札を一枚抜いて私の勉強机の端に置く。
「キリがいいときでいいから。お願いね」
お母さんは机の上に開かれた教科書とノートをチラリと見ながらそう言うと、すぐに忙しそうに出て行った。
「わかった」
早足でキッチンに戻っていったお母さんに、私の声は届かない。
ひとりごとみたいに部屋に響いた自分の声に苦笑いしながら、千円札を持って立ち上がる。
パンを買うのに家から一番近いのは、佐尾くんの住むマンションのそばにあるコンビニだ。スーパーは少し遠いから、おつかいはコンビニで済ますことにした。
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