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「あれ? 和紗ちゃん?」
食パンの入ったレジ袋を片手に自宅に向かって走り出そうとき、後ろから声をかけられた。
聞き覚えのある懐かしい声に、駆け出すのをやめて振り返る。そこに立っていたのは、中3のときに佐尾くんに好意を持っていた友達だった。
「瑞穂ちゃん……」
同じ町内に住んでいるのに、彼女に会うのは中学を卒業して以来だ。
高校に入学してすぐの頃はお互いにメッセージで近況を報告しあったりしていたけれど、元々大親友というわけでもなかったせいか、だんだんと疎遠になってしまったのだ。
「ひさしぶりだね! 元気だった?」
微笑みながら駆け寄ってくる瑞穂ちゃんは、ほんのり髪を染めて、ナチュラルにメイクもしていて、中学時代のよりも随分と垢抜けていた。
「瑞穂ちゃん、感じ変わった。綺麗になったね」
「和紗ちゃんだって大人っぽくなってるよ」
照れ臭そうに髪の毛の先を弄りながら、瑞穂ちゃんも私にも無難な褒め言葉を返してくれる。
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