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「和紗ちゃんて、確か佐尾くんと同じ高校に行ったんだよね?」
「う、ん……」
中学時代、瑞穂ちゃんが佐尾くんの名前を口にするのを何度も聞いてきたはずなのに。ひさしぶりに彼女が佐尾くんの名前を呼ぶのを聞いて、ドキリとする。
「和紗ちゃんて、今、佐尾くんと交流あるの?」
そこへ、畳みかけるように問いかけられて、さらにドキリとした。
「え、どうして?」
「少し前の雨の日に、この近所で佐尾くんが女の子と一緒に傘に入って歩いてるとこを見かけたから」
「そ、なんだ……」
「そうなの。雨で視界が悪かったけど、佐尾くんの横顔だけは遠目でもはっきりわかったんだ。さすが、中学時代に好きだっただけのことはあるでしょ?」
瑞穂ちゃんがそう言って、得意げに笑う。
「それでね、佐尾くんと一緒に傘に入って歩いてた女の子がなんとなく和紗ちゃんに似てたような気がしたんだけど……。違ったかな?」
瑞穂ちゃんが、私を見ながら小さく首を傾げる。その顔を見つめ返しながら、私はレジ袋を握る手に変な汗をかいていた。
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