3.雨上がりの放課後

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瑞穂ちゃんの目撃情報が最近なのだとしたら、佐尾くんと一緒に傘に入っていたのはたぶん私だ。 だけど、素直に「そうだよ」と肯定していいものかどうか迷った。 中学時代の瑞穂ちゃんは、佐尾くんのことが本気で好きだった。卒業してから1年半は過ぎているのに、今でも遠目で佐尾くんの顔が認識できるということは、瑞穂ちゃんはまだ彼のことが好きなのかもしれない。 子猫の一件があってから、私と佐尾くんは雨の日に言葉を交わす程度には親しくなった。 私たちの間にやましいことはないけれど、私は中学時代に、瑞穂ちゃんから毎日のように恋愛相談を受けていたわけで……。 好きだった(もしかしたら今も好き)な人と、恋愛相談をしていた友達が雨の日に一緒に下校していたなんて知ったら、瑞穂ちゃんがどんな気持ちになるか────、そんなこと、考えるまでもなく、容易に想像がつく。 「んー、心当たりない……」 だから、咄嗟に嘘をついた。本当のことを言えば、瑞穂ちゃんに裏切り者だと思われるような気がして怖かったから。
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