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「違ったんだ? よく似てるなぁと思ったんだけど、見間違いだったんだね。和紗ちゃんの高校の制服着てたし、一緒にいたのは彼女だったのかなー」
瑞穂ちゃんは、私のついた嘘を少しも疑わなかった。というよりは、疑うという概念すら浮かばなかったのだろう。
瑞穂ちゃんはきっと、目立たない私が佐尾くんと親しくなることなんて、地球が反転してもあり得ないことだと思っているはずだから。
「佐尾くん、高校でもやっぱりモテてる? バスケ部続けてるのかな」
「モテてる、けど。部活はやってないみたい」
「そうなんだー。残念」
今の私は、中学時代に瑞穂ちゃんが知らなかった佐尾くんのことを知っている。
膝の怪我で部活ができないことや、バスケ自体は同中の元部活メンバーと続けていること。
だけど、その情報をなんとなく教えたくなかったし、私が今、佐尾くんと同じクラスだということも言い出せなかった。
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