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もしまだコンビニに瑞穂ちゃんがいて、そこに佐尾くんがやってきたら……。
瑞穂ちゃんは言っていたとおり、佐尾くんに話しかけるのかな。彼氏一筋だと言っていたけど、かつて好きだった人と偶然の再会したら、少しくらいは心が揺れるんじゃないかな。
そんな考えがふつふつと胸に湧き上がってきて、なんとも言えない複雑な気持ちになる。
その想いが顔に出ていたのか、佐尾くんが不思議そうに私のことを見ていた。
「西條さん? どうかした?」
名前を呼ばれてはっとする。
「うぅん、何も……」
急いで首を横に振ったら、佐尾くんが私に向かって手を振った。
「帰り道、気を付けて。また明日ね」
「また、明日」
ゆっくりと手を振り返すと、佐尾くんがにこりと私に微笑みかけてくる。
その笑顔は、彼が背を向けて行ってしまったあとも残像となって、いつまでも私の瞼の裏に焼き付いていた。
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