第1章

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私は優しく微笑んだ神楽に着いて行き、レジに並ぶ。 お会計を済ませて服屋を出る。 「本屋は確か1階下でしたか」 「うん! エスカレーターの下りは……」 「向こう側ですね」 下りエスカレーターに向かうまでに私はついキョロキョロとしてしまう。見たことのないお店がたくさんあって、あそこのパフェが美味しそう、とかあの靴可愛いな、とか思わずにはいられないのだ。 「ねぇ、神楽は欲しい物とかないの?」 「欲しい物ですか。そうですね、特にはありませんが。どうかしたのですか?」 「一緒に来てくれて服を選んでくれたお礼したいなって」 「気にしなくていいですよ? ですが、そうですね……。私も新しい本が欲しいです」 私が落ち込んだ様子を見て、欲しい物を言ってくれる神楽は本当に優しいと思う。 あの狼ももうちょっと私に優しくしてくれてもいいと思うのだよ。 「あ! 時雨は何がいいかな?」 「お優しいですね。彼には普段食べれないようなおやつなんてどうでしょう?」 ほんわかした笑顔で目を細めて私を見る神楽が、一瞬孫を見るおばあちゃんに見えたのはきっと気のせいだ。 でもおやつか。それはいいね。
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