第1章

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3年ぐらい前に町に来た時にお土産として買ったグミを、時雨は大層気に入ってくれたのだ。すごく幸せそうに食べていたのを覚えている。 「どんなのだったかよく覚えてないけど、見ればわかる! ……多分」 「無ければ違うグミを買ってあげましょうか」 私はこくり、と頷いてから、神楽に続いてエスカレーターに乗った。 食料品売り場は1階。 「神楽は欲しいものある?」 「いえ。先ほど本を買って頂きましたからね。あぁ、そうでした、灯代さま。少し急がないとバスに乗り遅れてしまいますので気を付けてくださいね」 「はぁ~い!」 バスの時間の事、すっかり忘れてたよ。 最初にバスに乗った停留所に停まるバスは、本数が限られている。一見どのバスとも違わないし、普通に人間も乗れる。けれど、終点が来ても、その先に続く。その違いは……感覚で見極める。 大丈夫、人間には普通の終点までしか無いようにしか思わない。 私はバスの時間を考えて、おやつを買い物かごに入れていく。かごを持ってくれている神楽は涼しい顔で、重そうなのにそう見えない。
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