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「でも、家の中には入ってきてないよね?」
「あぁ」
廊下を歩いている間、私は神楽の腕に掴まっていた。
「でも、本当に迷子なら大変ですね」
「うん。ちゃんと帰してあげなくちゃ」
そうは言っても、怖いものは怖いので神楽の腕は離さない。
だって不審者とかだったら嫌だし……。襲われたら怖いし。
「時雨、年齢などわかりますか?」
「若い。としか」
神楽の問いに、鼻を少しひくつかせて言った。
丁度玄関に着き、神楽が下駄を履く。
「開けますよ」
「うん……」
神楽はそっと玄関の引き戸を開ける。
ーーガラガラ……
だ、誰もいない?
日が落ちて暗くなった外が目に飛び込んできた。けれど、人らしき姿は見えない。私も下駄を履いて、神楽の横に立つ。顔を外に出してみたけれど、誰かいるようには思えなかった。
「本当に人間の匂いしたの?」
私は小声で時雨に聞いたが、コクコクと頷かれてしまった。
仕方ない、外に出てみるか。
「だ、誰かいますか~?」
恐る恐る声を掛けてみる。聞こえてくるのは風に揺られた葉っぱの擦れる音と、私が踏んだ落ち葉の音やパキッと言う枝が折れた音だけ。
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