第1章

3/18
150人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
「はぁ……。その服が暑いんじゃないの? 新しい服でも買えば?」 浮かせていた頭を、前足に置いて目を瞑る時雨。 また寝ようとしてるよ、この狼は。 「袴、可愛くない?」 「……どんな耳してんの? そんな事誰が言ったよ」 目を開ける事も、こちらに顔を向ける事もなく呆れたように言う時雨。 でも新しい服か。 確かに欲しいね! 「よし! 洋服買いに行こう!」 私は立ち上がって、右手でガッツポーズをする。 でも時雨を連れて行くわけにはいかないし……。 「時雨ぇ~」 私は懇願するように時雨に縋る。 時雨は片目だけを開けて私を見た。 「神楽でも連れてけば?」 「なるほど!」 そう言って目を瞑った時雨を抱きしめて、クーラーの下の外に続くドアを開ける。 段差の下にあるサンダルをつっかけて外に出た。 「かーぐーらー!」 私は大声で木が生い茂る森に向かって名前を呼んだ。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!