150人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
「はぁ……。その服が暑いんじゃないの? 新しい服でも買えば?」
浮かせていた頭を、前足に置いて目を瞑る時雨。
また寝ようとしてるよ、この狼は。
「袴、可愛くない?」
「……どんな耳してんの? そんな事誰が言ったよ」
目を開ける事も、こちらに顔を向ける事もなく呆れたように言う時雨。
でも新しい服か。
確かに欲しいね!
「よし! 洋服買いに行こう!」
私は立ち上がって、右手でガッツポーズをする。
でも時雨を連れて行くわけにはいかないし……。
「時雨ぇ~」
私は懇願するように時雨に縋る。
時雨は片目だけを開けて私を見た。
「神楽でも連れてけば?」
「なるほど!」
そう言って目を瞑った時雨を抱きしめて、クーラーの下の外に続くドアを開ける。
段差の下にあるサンダルをつっかけて外に出た。
「かーぐーらー!」
私は大声で木が生い茂る森に向かって名前を呼んだ。
最初のコメントを投稿しよう!