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ガサガサと草むらが揺れる。
「お呼びですか?」
そこから出てきたのは九尾の狐だった。
「うん! あのね、私の洋服を買いに行こ!」
「洋服とは珍しいですね」
「シグがね、袴が暑いんじゃないのって言うから」
私は、自分の着ている袴を見下ろしながら言う。
「とても可愛くて似合っておられますけれどね」
クスクスと笑って言う神楽に、私は嬉しくてつい、頬が緩んでしまう。
見たか時雨、私は褒めてもらったぞ!
振り向いて時雨を見ると、目を閉じて寝ていた。
「それで、どちらまで行かれるのですか?」
「町まで行こう! 新しくできたと噂のショッピングモールだよ!」
私は腰に両手を当て、胸を張ってドヤ顔で宣言した。
それを聞いた神楽は、薄い水色の生地に赤や黒の金魚が泳いでいる着物を着た、人間の綺麗な女性姿に変化した。
「今日は女の人だ!」
「お買い物は同性とのほうがよろしいかと思いまして」
「すっごく綺麗!」
「ありがとうございます」
クスクスと笑った神楽は、綺麗な腰まである黒髪を緩く束ねていて、どこからどう見ても綺麗な女の人で、つい見惚れてしまった。
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