第1章

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「洋服は涼しげなものを選びましょう」 「うん」 バス停に着き、5分後に来る予定のバスを待つ。 3時間置きに来るから、ナイスタイミングだった。 「そう言えば、さっきはあんな所で何してたの?」 「何というほどの事もないですよ。ただの散歩です」 そう微笑む神楽は、嘘をついているようには見えない。……と言うか、もともと嘘をつかない。 狐は人を化かすと言うのにね……。 「バスが来ましたね」 神楽が見ている方向を見ると、確かに遠くからバスが来ているのが見えた。 私たちの前で止まり、ドアが開く。バスに乗り込むと後ろの方の座席に座った。 「貸切だ」 「町の方へ行くと、どんどん増えてきますよ」 私たち以外に誰も乗っていないバスは、何となく新鮮な気分になる。とは言え、大体家の方からバスに乗る時は貸切状態の事が多いけど。 ここから1時間程、バスに揺られる。 「着いたら起こしてね」 「はい」 神楽の肩に頭を預けて、目を閉じる。 バスの中は冷房が効いていて、涼しくて気持ちいい。その心地よさから私は直ぐに意識を手放した。
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