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開会式が終わり、早くもトーナメントの一回戦が始まろうとしていた。
「涅六田享四郎対、アン・ミンス!」
享四郎の初戦の相手は、枕営業の女王、アン・ミンス。
「うふっ、アタシのテクニックで天にも昇る心地よさを体感させたげるわ。ぼ、う、やっ」
大手有名寝具メーカーの社長を勤める女装家である。
敷き布団が敷かれた舞台で両者は向かい合い、ギラギラとした目から火花をちらつかせる。頃合いを見て二人の間に立っていた寝(審)判が手を挙げた。
「時間無制限、一睡勝負…………おやすみなさい!」
開始の合図と同時に動いたのはアン・ミンス。
「いくわよ! 高級羽毛布団アーンド安眠枕!」
「ぬ!?」
素早く享四郎の上に布団が被せられ、倒れたところに枕が置かれた。
「なっ、なんという圧倒的寝心地感……! マズイ、意識が、遠の、ぐーっ……」
高いびきをかく享四郎。それを見て、寝判が宣言した。
「涅六田享四郎の睡眠を確認。この勝負、アン・ミンスの勝ち!」
「おほほほほ! アタシの寝具は世界一ぃ!」
こうして享四郎は呆気なく初戦で散った。
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