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でも、それは他人が読んだらぼくと同じように感じたかと言えばきっと違う感想を抱くようにも思える。
別々の場所に居て、別々の日常を生きているぼくらに共通しているのは、家族に頼れないという孤独だから。
家族がいて何もなく平和ならば、きっとぼくらのこの手紙の中身を読んだとしても、得られる感動は全く別のものになるだろう。それは、ぼくがお母さんや、行方不明のままのお父さんと解り合えなかったことからも解ることで。
解り合えないということを知れば、他人と自分の距離も解るようになる。
ぼくはこのひとりぼっちを誇りにさえ思っているところがある。
『お母さんに話したいことがあると言っても、寝不足で疲れている顔を見ると何も言い出せなくなる』
そう書いてあったインクの文字が濡れた跡がくっきりと残っていた。
アジサイの花弁のように点々と散りばめられた涙の跡を指先に感じると、いますぐ巴のそばに行って抱きしめてあげたいという気持ちが自然と湧き上がる。
中学生になって、繰り返されるテストと、積み上げられていく山ほどの課題をこなしながらも、ぼくは年の離れた弟と二人で家のことをして、生活保護を貰いながら精神的に病んでしまった母親を支えながら暮らしていた。
母は孤独を愛せない人で、父親が消えたのは全部自分のせいだと信じていた。二人がどんな夫婦関係だったかなんて知らないぼくには、ただ泣いている母の背中に手を乗せているしか、母の代わりに家事をして、弟の相手をするしかできない。
この歯がゆさは巴に対するものとそう大きな差がない気がする。
ぼくは最近になってようやく、手紙の中で自分の置かれている状況を巴に打ち明けるようになっていた。
『高志くんはすごく頑張ってたんだね』
彼女の丁寧な文字を読んだとき、ぼくはまた突然胸の奥をかきむしられた。
ぼくの頑張りを認めてくれた彼女の言葉には、壮絶な威力がある。
それまでずっと誰にも言えずにいた気持ちが自然と溢れ出すような、そんな気分になっていった。
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