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松島 巴さんは、一年生からの腐れ縁だ。
四クラスあるのになぜか六回も同じクラスになっている。
それなのに、ぼくと初めて口を利いたのは六年生になってからで、
出席番号が並んでいるというだけでなぜか係仕事も班も一緒。
担任の先生によるんだろうけど、
こうした環境の変化にぼくはかなりストレスを感じた。
松島さんは人気がある。
そのせいで常に誰かから話しかけられてしまう。
担当の仕事をしている時に人が集まってくると、
ぼくはどうしたって落ち着かない。
基本ひとりが一番心地よいぼくにとって、
金魚の糞がくっついてくる松島さんとの組み合わせは
本当に勘弁してほしいことだと痛感した。
そんなことをうまく先生に伝えて変更を頼むこともできない情けないぼくは、
一学期の前半が終わっていくのを祈るような気持ちで待つしかなかった。
学校に休息タイムが激減したせいで、給食も味わえなくなっている。
だからきっと、そのせいだと思うんだ。
朝、学校に来るときに涙が溢れ出すのは。
男が泣くだなんて格好悪いから泣いてはいけない。
お父さんは居なくなる前に、よくぼくにそんなことを言っていた。
今年の一月から突然家出したお父さんからの連絡はなくなって、
お母さんが見る見る衰弱してしまって、
家に帰ると家事や買い物がぼくを待っている。
腹をすかせた小さな弟が待っている。
まだ五歳の弟に何度説明しても、
我が家で起きていることは理解できるわけもなくて
ぼくはただ成り行きを待つしか手段がなかった。
そんな暇つぶしには丁度良いはずの学校暮らしが今じゃオアシスではなく拷問に近い。
松島さんは面倒見が良すぎて、いつもひとりぼっちのぼくに声を掛けてくれる。
でも、本当に迷惑だと思っていた。
ぼくは今日もひとりになりたいのに、ひとりになれなかった……。
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