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「何?」
後ろを見るなり、速水さんは眼鏡をくいと上げた。
速水さんは真顔で僕の顔を見ている。眼光が鋭い。
僕は速水さんに「ごめん」と言い、前に向き直った。
あれ? 速水さんには僕が見えるのか?
それとも背中は見えるのか?
それはおかしい・・
いや、今はそんなことはどうでもいい。この状況はどうしたらいいんだ?
保健室に行ったらいいのか?
そして、先生には僕が見えるのだろうか?
手を挙げたらいいんじゃないか?
ああ、どうしたらいい?
思考が錯綜する。
そんなことを考えながら、僕は斜め前の窓際の席の水沢純子を見た。
僕の苦しみとは対照的に水沢純子が涼しげに先生の話を聞いている。
窓の外の青い空に水沢さんの黒髪が溶けている・・そんな風に見えた。
ああ、このまま、透明のままだったら、あの髪に触れることができるのだろうか。
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